文化的景観

急斜面が続く越前海岸の福井市居倉町。水仙栽培は、春のワカメ漁など、いくつもの生業を重ねて生きる人たちの冬の営みだ。
福井の中でも比較的暖 かく、水はけの良い急斜面は、水仙栽培にぴったりの条件。自生する水仙を収穫していたものを、斜面や棚田に栽培地を広げ、地域の特産に発展させてきた。そんな地域での暮らしの知恵が、白く、甘い香りが一面に広がる、冬の福井を象徴する風景を作り上げた。
この営みと暮らしの風景の、主役である水仙農家と、日本海、集落の家並み、水仙畑が織りなす、まさに文化的景観を写してみた。

倉橋 宏典
東京で都市計画・まちづくりのコンサルタントで働いたのち、11年前に福井にUターン。
現在は福井県庁。子供と一緒にカメラ修行中。

風景の守り人

水仙はつぼみのまま、畑も青々とした12月が、実は収穫の最盛期である。越前水仙は、とても厳しい出荷基準を設けている。花が咲いてしまうと出荷できないのだ。
急斜面の畑には、年2回の下草狩り、肥料やり、そして収穫と、一年を通して手を入れないと、ススキや雑草に負けて 水仙は育たなくなるという。「大変そうですね」と思わず声をかけると「平地よりも斜面の方が、かがまなくて良いから、草刈りも収穫もやりやすい」と笑う。
彼らがいるからこそ、守り、伝えられる風景。カメラを向けると、照れながらもこちらを向いた顔は水仙に負けずキリッとして、とても誇らしく見えた。

倉橋 宏典
東京で都市計画・まちづくりのコンサルタントで働いたのち、11年前に福井にUターン。
現在は福井県庁。子供と一緒にカメラ修行中。