水仙畑という宇宙

福井市居倉町の急斜面の水仙畑。12月なので、まだ水仙の花はポツポツとしか咲いておらず、一面に濃い翠色が広がっている。そこにオレンジ色のヤッケをきた農家さんが今は盛りと水仙の刈り取りを進めていた。そう、水仙出荷の最盛期は花がまだ咲ききらない12月なのだ。12月の日本海といえば北西の季節風が強くなり、雪や霙が吹き降る季節。収穫作業は決して楽ではないはず。でも農家さんはこともなげに急な斜面をすいすいと進みながら収穫を行う。写真に収めた農家さんの姿は、まるで水仙畑という名の翠の宇宙を遊泳する飛行士のよう。その姿に少し憧れる。

藤川 明宏
福井市立郷土歴史博物館 学芸員。専門は歴史考古学と仏教美術を少々。三角縁神獣鏡チョコの職人。福井の仏像を調査中。最近は越前海岸の水仙畑にも詳しい。

水仙を愛しむ手

水仙を選別する作業の一瞬を捉えた写真。水仙を包み込むようなやさしさの溢れる手に思わずシャッターを切った。この日は水仙出荷のピーク時期にあたり、大量の水仙を選別する作業が続いていたが、忙しい中でも、水仙をさばく手先は繊細さを失っていないことに気付かされた。水仙の可憐さは、越前海岸の変化に富んだ風土によってのみ生み出されるのではなく、人の関わりよる温かさが加わって形作られていくものなのかもしれない。

藤川 明宏
福井市の文化財保護係。専門は歴史考古学と仏教美術を少々。三角縁神獣鏡チョコの職人。福井の仏像を調査中。最近は越前海岸の水仙畑にも詳しい。