福井県にある越前海岸の越廼地区居倉町には斜面につくられた水仙畑が続いている。こ の50年間で、水田や桑畑は水仙畑に変わり昨年重要文化的景観に選定された。水仙栽培を されている田中民子さんにお話を聞いた。
生粋の居倉育ちの田中さんは、退職後に家業を継いで水仙栽培をしている。もうすぐ80歳の今も7反(約7000㎡)の水仙畑で年間3万本を育てている。最盛期の12月には朝、 600本を2時間で刈り取り、花が温まって開花しないように寒風のなかで、水洗いから切りそろえ、選別まで13時間働く。 田中さんはJAに出荷する以外の6000本は個人販売を行っており、お歳暮用に楽しみにしている固定客もいる。出荷する水仙は開花の1週間以上前に刈り取るので、花に悪いねと言葉をかけるそうだ。出荷している水仙よりも、花が白く大きく薫り高い畑で咲いた水仙をできれば届けたいという。清楚で凛としたひかえめな水仙の魅力は田中さんが働き続ける原動力になっている。
北村明恵