福井の花、越前水仙

水仙農家の田中民子さんにお話を伺った。田中さんは、もうすぐ80歳になるとは思えないほどの元気な雰囲気があった。
水仙は水はけと斜面がとても大切だとのこと。昔は今の国道や山の上まで、水分がとても多い田んぼが広がっていたので、今より昔の方が水仙は広がっていなかったそうだ。そこで、「斜面での作業は辛くないですか」と聞くと、答えはやっぱり辛いそうだ。
私は、自分が水仙畑に行ったときを思い出した。行きだけでヘトネトな自分とシャキシャキ歩いている農家さん。改めて考えたら、高齢なのに本当にすごいなと思った。そして、「水仙を育てる上で大切にしていることはなんですか」と聞いたら、花が、1日でも長くもつように袴という普段土に埋まっている部分を長く切ると言っていた。
私はこのインタビューで、今まで知らなかった水仙のことがよく分かった。福井の花、水仙の魅力を福井県内だけでなく、県外の人にも興味をもってもらいたいなと思った。

石原 朱莉

民子さんと水仙

越前海岸に冬の時期だけ咲く越前水仙。冬の日本海の厳しい寒さにさらされて花弁は小さく保たれ、その可憐さや他にはない香りを求めて全国にもファンが多いことで知られています。 
そんな水仙を作り続けて25年の水仙農家、田中民子さんにお話を伺いました。

「 趣味はグランドゴルフ、シーズンオフの時には京都の美術館に行くのが楽しみ」と、 もうすぐ80歳になるとは思えないほど若々しい田中さんは言います。しかし、話が水仙づくりに及ぶと口調は険しくなりました。 

急斜面で草取りしないといけないこと、出荷の時期には朝から晩まで働き詰め。花を長持ちさせるために寒くても戸を開けて作業しなければならないこと。鹿による獣害。「若い人にはとてもできないと思う。私の代でもう終わりやろね」それは偽らざる本音なのでしょう。でも田中さんはきっぱりと「私は水仙を愛しています」と続けました。

田中さんは時々畑で水仙に向かって謝るといいます。それは規格を守るため、まだ若いうちに刈り取ってしまうから。田中さんは畑で成熟し花を咲かせた水仙と、若いまま摘み取られ花瓶の中で咲いた水仙は違うのだと話してくれました。本当の越前水仙は都会で見ることは出来ないのです。

倉橋 藍

越前水仙農家の田中さん

越廼地区で「越前水仙」の栽培を行っている田中民子さんにお話を聞きました。55歳まで越廼村役場に勤務し退職後水仙栽培に携わるようになったようです。
80歳近くのご高齢で、急な斜面で作業するのは身体がキツいと話してました。
水仙を痛めないように一日でも長く持たす為に水仙の根本のハカマを綺麗に長く切るように工夫されているようです。
水仙はつぼみのまま出荷され、花を生ける人に届いてから開花が始まるようになっています。しかし、若い花を、切っても黄色味が強く、白くならないし、花も大きくならない。手元に届いた時に本当の良い水仙でないのがとても歯痒いようでした。
越前水仙農家の田中さんのお話を通して、人と人とのつながりやそこにしかない魅力がまだまだ眠っていることを知りました。福井県に住んでいても普段の生活では出会うことができなかった水仙農家さん。もっと地域の人に出会いたい、地域のことを知りたい、そんな気持ちが湧いてくるような時間でした。

山本 裕紀子

越前水仙

冬の越前海岸を車で走っていると山の斜面に水仙畑が広がっている場所が多く見られる。この寒い時期には海岸の景観と山肌の水仙畑そして時々見えるカニ料理の看板もあり五感で旅を楽しめます。

福井市居倉町に在住する水仙農家の人に話を伺うことが出来ました。この地で生まれ住み続けて80年と、とてもこの年には見えない田中民子さん、水仙のように背筋も伸び明快な答えも帰ってくる、水仙農家の高齢者は病気知らずの健康な生活を送っている人も多いと聞いたこともある。

出荷時は朝から急斜面の場で刈り取りをして持ち帰り茎の泥を洗い流し選別作業にと、夜の10時までも作業が続き忙しい日々が続くが、水仙を愛してるからこそ出来る仕事なんだと言う言葉が心に響く。この水仙には香りと凛とした姿に魅せられて全国に多くのファンがいる。全国に出荷するための組合もあり、寒冷のなか2カ月位の間は朝から夜まで忙しい日々が続く。農家には個人的にもファンから毎年注文が入り、家の中に生けたりお歳暮用等に利用にするらしい。

吉田 隆一

これからも、この景観を残し続けるために

日本海に面し、厳しい海風が吹き寄せる、福井県の越前海岸。そこで咲き誇る越前水仙を、長年にわたり栽培してきた水仙農家の田中民子さんは、若々しく見えるもののもうすぐ80才。
収穫だけでなく、草刈りなど維持管理に大変な労力をかけながらも、あふれ出てくるのは越前水仙への「愛情」。つぼみの状態で摘み取りながら、「都会で、ちゃんと咲けるの?若いのにここから離してしまってごめんね、と話しかけるの」と語る田中さん。水仙が一番きれいに咲けるのは、ここだと知っているからだ。
その顔を見ているうちに、「何か自分たちにできることはないか」という気持ちが、自然とこみ上げてくる。田中さんの体に染みついた技術は引き継げないかもしれない。でも水仙への「想い」があれば、「ヨソモノ」でもできることがきっとあるはず。かけがえのないこの景観を残していくために、やれることから始めてみよう。

石原康宏

越前水仙は畑にこそ

福井県にある越前海岸の越廼地区居倉町には斜面につくられた水仙畑が続いている。こ の50年間で、水田や桑畑は水仙畑に変わり昨年重要文化的景観に選定された。水仙栽培を されている田中民子さんにお話を聞いた。

生粋の居倉育ちの田中さんは、退職後に家業を継いで水仙栽培をしている。もうすぐ80歳の今も7反(約7000㎡)の水仙畑で年間3万本を育てている。最盛期の12月には朝、 600本を2時間で刈り取り、花が温まって開花しないように寒風のなかで、水洗いから切りそろえ、選別まで13時間働く。 田中さんはJAに出荷する以外の6000本は個人販売を行っており、お歳暮用に楽しみにしている固定客もいる。出荷する水仙は開花の1週間以上前に刈り取るので、花に悪いねと言葉をかけるそうだ。出荷している水仙よりも、花が白く大きく薫り高い畑で咲いた水仙をできれば届けたいという。清楚で凛としたひかえめな水仙の魅力は田中さんが働き続ける原動力になっている。

北村明恵

水仙産地の絶景さんぽ

冬の福井、空はほとんど鉛色。日本海は荒れ狂う。
そんな景色にも、彩りがある。
小さな白い花、越前水仙。海に背を向けると、山の斜面はクリーム色と緑のコントラストがきれいだ。
越前海岸と水仙畑が織りなす美観は、地元のおじちゃん、おばちゃんの普通な生活の営みでつくられているんだな。
「当たり前のこと、してきただけ。」
急斜面での作業はとても大変だと想像できる。
なのに、さらっと笑顔で話されていた。
高台に咲く小さな白い花達は、眼下で作業するおじちゃんやおばちゃんを見守っているように見えました。

林 美穂
福井県福井市生まれ。
趣味は、サウナで無心に汗をかいて、知らない人に話しかけられること。
特技は、知らない土地で現地の人と間違われるのか、道を聞かれること。
これからやりたいことは
福井の全酒蔵巡り!

文化的景観

急斜面が続く越前海岸の福井市居倉町。水仙栽培は、春のワカメ漁など、いくつもの生業を重ねて生きる人たちの冬の営みだ。
福井の中でも比較的暖 かく、水はけの良い急斜面は、水仙栽培にぴったりの条件。自生する水仙を収穫していたものを、斜面や棚田に栽培地を広げ、地域の特産に発展させてきた。そんな地域での暮らしの知恵が、白く、甘い香りが一面に広がる、冬の福井を象徴する風景を作り上げた。
この営みと暮らしの風景の、主役である水仙農家と、日本海、集落の家並み、水仙畑が織りなす、まさに文化的景観を写してみた。

倉橋 宏典
東京で都市計画・まちづくりのコンサルタントで働いたのち、11年前に福井にUターン。
現在は福井県庁。子供と一緒にカメラ修行中。

寄り添い支え合いながら

日本海の潮風に揉まれて育つ「越前水仙」は、他の産地の日本水仙に比べ、花がひきしまり、香りが強く、日持ちと姿勢が良いのが特徴だ。一本の立姿は、細いのに硬く締まって揺らぎがない。
日本海の潮風は、波の花が海から山に舞い上がるほど強い。越前水仙は、強い風を受けても倒れない。9月に球根から芽が出て、12月に花が咲くまでの4カ月間、水仙一本一本が互いに寄り添い支え合い耐えながら成長しているからだ。
藤崎武彦さん、愛子さんもご夫妻連れ添いながら、水仙農家をされている。お二人の笑顔と距離が、寄り添い支え合いながらの人生を感じさせてくれた。
水仙を手に取るとき、甘くて爽やかな香りと共に、水仙同士、人同士の繋がりを思い浮かべて欲しい。

中村 麻由美
福井市園芸センター
園芸技師。
越前水仙の試験研究、栽培農家の支援を行う。

水仙栽培農家さん

ローカルフォトスクールに参加して、カメラの基本を教わり、自分目線で良いと思った瞬間を撮影しました。温かい眼差しで見つめ合う姿が素敵で、カメラ初心者ですが、ご夫婦の自然な表情をしている一瞬を狙いました。
斜面いっぱいに広がる越前海岸の水仙畑で奮闘する、凛々しいご夫婦の姿。その後の作業場での優しい笑顔の姿、両方を見せていただきました。私の知らない越前海岸の魅力や個性豊かな福井人を探して、ここにしかない福井を全国の人たちに知ってもらえるように発信していきたいです。

山本 裕紀子
結婚を機に大阪から福井に来て、16年になります。
障害者の就労継続支援B型事業所で、一人ひとりが社会の中で、喜びを見い出していくことを目標に、サポートをするお仕事をしてます。